労働契約書に必ず含めるべき重要項目

はじめに

従業員を雇用する際に作成する「労働契約書」は、雇用主と従業員の間で結ばれる契約内容を明確にし、トラブルを未然に防ぐための重要な書類です。しかし、労働契約書には必ず盛り込むべき基本的な項目があり、これを曖昧にしてしまうと法的なリスクが生じかねません。本記事では、労働契約書に必ず含めるべき重要項目について、具体的に解説します。各ポイントを押さえ、安心して働ける職場環境を整える一助にしてください。


1. 労働契約書の役割

労働契約書は、採用時に従業員と会社が交わす労働条件や業務内容などを明記した書類で、労働基準法に基づく重要な義務項目です。労働契約書が不十分であると、従業員と会社の間に誤解が生じ、労働トラブルに発展するリスクが高まります。そのため、労働契約書には会社と従業員双方の権利・義務を明確に定めることが不可欠です。


2. 労働契約書に必ず含めるべき重要項目

2-1. 労働契約期間

労働契約の期間は、必ず明示する必要があります。契約の期間は「無期雇用」か「有期雇用」かを明確にし、有期の場合は契約の開始日と終了日を記載します。また、更新の可能性がある場合には、更新基準や更新の可否についても記載することで、従業員が雇用期間を正確に把握できるようにしましょう。

2-2. 業務内容と就業場所

従業員が担当する具体的な業務内容や勤務地を労働契約書に記載することで、業務範囲が明確になります。業務内容が曖昧であると、職務変更や配置転換の際にトラブルが発生する可能性があります。また、リモートワークや複数の勤務地で働く場合など、勤務形態に応じた記載が必要です。

2-3. 労働時間、休憩、休日

労働時間は、始業時刻と終業時刻、所定労働時間を明確に記載します。フレックスタイム制や変形労働時間制を採用している場合には、その詳細についても記載が求められます。休憩時間については、具体的な開始・終了時刻を示すと共に、1日の労働時間が6時間を超える場合には法定の休憩を確保する旨も記載が必要です。

2-4. 賃金の額、計算方法、支払い方法

賃金に関する情報は、労働契約書の中でも特に重要な項目です。基本給の金額、手当(通勤手当や住宅手当など)、賃金の計算方法(時給・日給・月給など)、支給日、支払方法を明示します。また、残業手当や深夜・休日手当についても、労働基準法に基づき詳細を記載します。さらに、控除項目(税金や社会保険料など)も忘れずに記載しましょう。

2-5. 退職・解雇に関する事項

従業員が退職する際の手続きや条件も明記することが望ましいです。特に、試用期間中や規律違反、能力不足による解雇条件については具体的に記載することで、万が一の際にトラブルを防止できます。また、自己都合退職の場合の申し出期限(例:退職希望日の1か月前など)も明記しておきましょう。


3. 労働契約書で押さえておくべきポイント

3-1. 労働契約書の記載内容は法令を順守する

労働契約書の内容は、労働基準法やその他の法令に基づいたものである必要があります。特に、賃金や労働時間、解雇に関する内容については、法令に反した記載をすると無効となる場合があるため注意が必要です。また、就業規則に定めた事項と矛盾しないよう確認し、必要に応じて法改正に合わせて見直しを行うことが重要です。

3-2. 契約更新の基準を明確にする

有期雇用契約の場合、契約更新の際にトラブルが発生しやすいため、契約更新の基準や条件を明確に記載しましょう。例えば、「業務成績が良好な場合」や「会社が必要と認めた場合」など、具体的な基準を示すことで、更新に関する誤解を防ぐことができます。

3-3. 機密保持に関する事項

近年、個人情報保護の重要性が増しており、特に機密情報の漏洩は企業にとって大きなリスクとなります。従業員が業務上知り得た機密情報を漏洩しないよう、機密保持に関する項目も記載することが推奨されます。具体的には、個人情報や顧客データ、社内ノウハウの取り扱いについて注意事項を記載し、退職後も守るべきルールを明確にしましょう。

3-4. 副業に関する事項

近年、副業解禁の動きが進む中で、副業を認める企業も増加していますが、従業員の副業が本業に悪影響を及ぼすことを防ぐためにも、労働契約書での確認が必要です。副業を行う際の条件や、企業に事前届出が必要な場合などの条件を定めることで、トラブルを予防します。


4. 労働契約書の重要性と社会保険労務士の役割

労働契約書は、従業員と企業の関係を良好に保つための土台です。適切に労働契約書を作成することで、従業員の信頼を得るだけでなく、法的トラブルも未然に防げます。しかし、労働契約書の作成には法的な知識が求められ、記載漏れや誤記があると後々の問題となることも少なくありません。

そこで、労働契約書の作成や内容確認を専門家である社会保険労務士に依頼することで、より安心して契約を進められます。社会保険労務士は、法改正への対応や契約書内容の適正な見直しを行い、企業が安心して従業員を雇用できる環境づくりをサポートします。特に労働条件の改定や新たな制度導入を検討している場合には、社会保険労務士の力を借りることで、適切な契約内容に調整が可能です。


まとめ

労働契約書には、雇用期間や業務内容、労働時間、賃金、退職に関する事項など、必ず記載すべき基本事項が存在します。これらを網羅することで、従業員と企業の双方が安心して働ける環境が整います。また、副業や機密保持の条件を記載し、トラブル防止に努めることも重要です。

労働契約書の作成に不安がある場合や、記載内容を再確認したいときは、社会保険労務士に相談し、法令遵守を確保した上で労働契約を結びましょう。適切な労働契約書を備え、健全で信頼できる雇用関係を築くことが、企業の成長にもつながります。