離職票の発行とその手続き

はじめに

従業員が退職する際に企業が発行する「離職票」は、失業手当の受給手続きに欠かせない重要な書類です。従業員にとって、退職後の生活を支える失業手当は大切なものですので、企業としても迅速かつ適切な手続きを行うことが求められます。今回は、離職票の発行に関する基本的な手続きや注意点について詳しく解説します。


1. 離職票とは?

離職票は、従業員が退職後に失業手当を申請するために必要な書類で、正式には「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれます。この離職票がなければ、失業手当を受け取ることができないため、退職者からの依頼があれば速やかに発行する必要があります。離職票には主に「離職票1」と「離職票2」の2種類があり、それぞれ役割が異なります。

離職票1

「離職票1」は、雇用保険の被保険者であったことを証明する書類です。退職日までの雇用保険の加入状況が記載され、失業手当を受けるために必要な情報が含まれています。

離職票2

「離職票2」には、退職者の退職理由や退職直前の給与などが記載されており、失業手当の受給条件や給付金額の算定に使用されます。特に、退職理由が失業手当の受給資格に影響を与えるため、正確に記載することが重要です。


2. 離職票の発行手続き

離職票の発行には、以下のような手順が必要です。これらの手続きを滞りなく進めることで、退職者が速やかに失業手当を申請できるようになります。

(1) 雇用保険資格喪失届の提出

まず、退職した従業員の雇用保険資格を喪失するための「雇用保険資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」をハローワークに提出します。この際、退職日から10日以内に手続きを完了させる必要があるため、速やかに処理を進めましょう。

(2) 離職票の発行申請

雇用保険資格喪失届を提出後、ハローワークが離職票を発行します。この発行には、資格喪失届の提出から約1週間程度かかる場合があるため、退職者にはあらかじめスケジュールを伝えておくと良いでしょう。

(3) 退職者への離職票交付

離職票が発行されたら、速やかに退職者に交付します。郵送する場合は、紛失や盗難のリスクを避けるため、書留などで送付するのが望ましいです。直接手渡しする場合も、記録を残すために受領証を取り交わすと良いでしょう。


3. 離職票の記載内容と注意点

離職票に記載する情報は、退職者の失業手当受給に影響を及ぼすため、正確に記載することが重要です。特に注意すべき点を以下にまとめました。

(1) 退職理由の明記

離職票2に記載する退職理由は、失業手当の受給条件や給付金額に直結するため、正確に記載しなければなりません。例えば、自己都合退職と会社都合退職では受給開始までの期間や給付額が異なります。会社都合退職の場合、倒産や解雇などの理由を具体的に明記する必要があります。

(2) 賃金額の正確な記載

離職票には、退職者が退職前に受け取っていた賃金額も記載します。この賃金額が誤って記載されると、失業手当の給付金額に誤差が生じるため、正確な金額を記載するようにしましょう。過去6か月間の平均賃金を基に計算するため、変動がある場合は特に注意が必要です。

(3) 適切な提出期限を守る

離職票の発行が遅れると、退職者の失業手当の受給が遅れる可能性があります。そのため、遅延なく発行手続きを進めることが求められます。退職日から10日以内に必要な書類をハローワークに提出し、離職票の発行がスムーズに進むよう努めましょう。


4. 離職票発行の際のポイント

(1) 退職者への事前説明

退職者に対して、離職票が失業手当の申請に必要であること、発行までに時間がかかることなどを事前に説明することが大切です。これにより、退職後の手続きをスムーズに進めることができ、トラブルを未然に防げます。

(2) ハローワークとの連携

離職票の発行は、ハローワークとのスムーズな連携が鍵となります。発行手続きを確実に進めるために、ハローワークの担当者とのやり取りを密にし、不備が生じないよう注意しましょう。

(3) 社会保険労務士に相談する

離職票の発行手続きや記載内容に不安がある場合、専門知識を持つ社会保険労務士に相談するのも一つの方法です。社会保険労務士は労務管理の専門家であり、正確な手続きや適切なアドバイスを提供してくれるため、安心して手続きを進められます。


まとめ

離職票の発行は、退職者が失業手当を受けるために不可欠な手続きです。企業としては、雇用保険資格喪失届の提出や正確な記載内容、期限内の手続きをしっかりと行い、退職者がスムーズに手続きを進められるようサポートすることが求められます。離職票の発行について理解を深め、迅速かつ適切に対応することで、退職後の生活を支える重要な一歩を踏み出しましょう。